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mysql:10093

From: "Zen Kishimoto" <"Zen Kishimoto" <zen@xxxxxxxxxx>>
Date: Thu, 9 Sep 2004 13:17:19 -0700
Subject: [mysql 10093] MySQLのCEOのソフトの特許への意見

皆様

MySQLのCEOのソフトの特許への意見の日本語訳をお届けします。 

岸本
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原文
http://www.alwayson-network.com/comments.php?id=P5141_0_4_0_C


オープンソース対ソフトウエアへの特許

ソフトウエアへの特許が加速してイノベーションが損なわれる!!

オープンソースの黎明期 (つまりベンチャーキャピタリスト
が投資する前)オープンソースは反ビジネスおよび反知的財産
だと思われていました。 しかし、これは正しくありません。
GPL (GNU General Public License) の根本はコピーライトの
法律に基づいています。GPLの強みは元のソースへの変更も
無料でかつオープンソースでなければならないというところ
に根ざします。これがオープンソースの動きを
活発にしました。

しかしながら、MySQLも含めて多くのオープンソースの会社
が強い立場を取っていることがあります。すなわち反特許の
立場です、何百万という人々に共有されているために、オープンソース
はソフト開発を民主化し、そのために品質を向上して、価格
の低いソフトを可能にしました。ソフトウエアへの特許は
オープンソースの動きがせっかく育ているイノベーションを
個々のプログラマーから取り上げて、一部の多くの特許と
弁護士を抱える企業に手渡してしまいます。

私たちはいくつかの広範囲をカバーする特許のことを知っています。
例えば、マウスをクリックする概念とか、ショッピング・カート
を利用するとかその他簡単な概念です。ソフト産業が成熟するに
つれて、特許の問題は核廃棄物の山にたとえられるようになって
きました。この産業の大手企業は広範囲をカバーする一般的な
特許を何千と持っています。もしあなたがプログラマーだったら
知らないうちに何千という特許を侵害しているかもしれません。
この状況に対処するには自分も多くの特許を所持するしかありません。

昔からこうだった訳ではありません。実際のところ1980年台までは
ソフトへ特許をつけることは不可能だと思われていました。この
見方はアメリカの最高裁の有名な2つの判例 Gottschalk 対 Benson (1972)
Parker 対 Flook (1978)に見られます。この判例ではソフトウエア
で実装された発明には特許が与えられないというものです。実際のところ
特許は発明を守るのが目的ですが、ソフトウエアのコードは書かれた言葉
のように発明とは考えられません。むしろアイディアの表現方法だと
いえます。そして特定のアイディアの表現方法が(表現方法のもととなる
アイディアではなく)コピーライトの法律で守られています。コピーライト
による保護があるので、プログラマーは制限なく標準をつくりあげたり
アルゴリズムの特許におびえることなくインターオペラビリティ
を実装することができます。

データベースの歴史を振り返ってなぜコピーライトが特許よりも
適しているかを考察してみましょう。

1970年にIBMのコンピュータ・サイエンティストのEdgar Coddが
新しいリレーショナル・データベースのアイディアを開発して
論文を発表しました。当時リレーショナル・データベースは
ハイアラキカルやネットワークモデルに勝るものでした。 Coddの論文
のおかげでIBMはシステムRとして知られる(最終的には現在のIBMのDB2データベー
ス)
リレーショナル・データベースのプロトタイプを開発しました。オーラクル
も同様に最初のコマーシャル版のリレーショナルデータベースを
開発しました。 カリフォルニア州立大学バークレー分校のMichael Stonebraker
Eugene Wong はCoddの論文を読みイングレス・データベースを開発しました。
システム R とイングレスの存在は他のコマーシャル版のデータベースの
殆どすべてに影響を与えました。例えば、Sybase, Informix,
Tandem, そしてMicrosoft のSQL サーバまでにもです。
SQL (Structured Query Language) はデファクト標準となり1986年には
ANSIの標準となり、1987年にはISOで批准されました。1980年台には
オープンソースのMySQL, Postgres, Firebirdなどが現れました。
これらデータベースは全て同一性やインターオペラビリティの保障の
恩恵を受けています。

今日データベースの世界市場は80億ドル(訳者注:約8,800億円)
規模です。非常に競争の激しい分野です。そのため、カスタマーは
多くの製品のなかから選択ができます。何十万人という人々
がデータベース産業で職を得ています。そしてそのほかに何百万と
いう人々がデータベース技術の広がりで恩恵を受けています。
インターネットで検索、、オンラインでの買い物、旅行の予約をする
たびにデータベースの技術は使用されています。データベース産業
は成功裏に拡大しました。それは特許によって縛られなかったからです。

もちろん、データベースの歴史はユニークではありません。
同じようなことがスプレッドシート、ワードプロセッサ、
電子メール、グラフィック・ユーザ・インタフェース、
ショッピング・カーと、検索エンジン、インターネットその
ものにも当てはまります。ウエブの発明者のTim Berners-Leeはソフトの
特許はクレージーだといいました。ウエブは標準がイノベーションを
支えたので発展しました。

ここで違った特許への面白い見方をしてみましょう。

「もし人々がアイディアを発明したときにどのようにして
特許を取得するか知っており、実際に取得するとどうなるでしょう。
産業会は完全に機能しなくなります。解決方法は特許の交換と更に
もっと特許を取得することとなります。特許を所持しない将来の
ベンチャー企業は大企業が課す多額の費用を払わなければなりません。
この状況はゆゆしいことです。大手企業は将来の競争を取り除くこと
に興味があります。」

これはMicrosoftのチェアーマンのBill Gatesが1991年5月16日づけ
に書いた「挑戦と戦略メモ」の一節です。

私は知的財産を無視しろとは言っていません。しかしながら、私
はコピーライトの法律がソフトを保護するのに適していると思っています。
コピーライトのおかげでIBM, Oracle, Microsoft, そして
MySQL ABですらソフトを合法的に守ることができます。それも問題なしに
オープンな標準を標榜しながらです。

現在EUではソフトの特許に関した加熱した議論が続いています。
EUの委員会が、もし採用されれば殆どすべてのプログラムの
ロジックを特許可能にする、「政治的 同意」
を5月18日に発表しました。しかしながら、ヨーロッパではソフトの
特許へのサポートは力が弱まってきています。オランダの国会の多数は
「イエス」と投票したのを撤回しようとしています。これは9月末に起
こるかもしれません。同様な動きはドイツを含む他の国々でも起こっています。
EU の委員会が特許に関する案を採択しても、ヨーロッパ国会には拒否権がありま
す。
2003年9月にはヨーロッパ国会はソフトの特許には「ノー」という
結論を出しています。

アメリカの特許の法律はヨーロッパでの問題と同様な問題を含んでいます。
ソフト産業が繁栄してイノベーションを育成するためには世界レベル
でソフトの特許には「ノー」というべきです。いまこそ、
ソフトの特許を廃棄してイノベーションをとオープンな標準をサポートする
ときです。
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Zen Kishimoto                        zen@xxxxxxxxxx
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